シャトーとドメーヌ
フランスのワインにはよく“シャトー”や“ドメーヌ”という名前が付いています。そして“シャトー”はボルドーワインに多く、“ドメーヌ”はブルゴーニュに多いもののフランスのワイン産地の多くに見受けられます。ワインの世界では“シャトー”も“ドメーヌ”も一般的には、どちらも「醸造所」という意味で使われております。
それでは、なぜそのような呼び名になったのでしょうか?
◆シャトー“シャトー”は日本語では「お城」と訳されますが、フランス語では領主の住居、別荘を意味します。
その昔、ボルドー地方は良質のワインが出来る土地として、貴族たちがこぞって葡萄園を作りました。そして自分たちの邸宅や別荘として立派な建物(シャトー)を建ててワイン造りを始めたのが始まりです。その後、貴族の没落とともに所有者も変わって
いきましたが、建物は残り新たな所有者がワイン造りを続けました。
そして他者が造るワインと差別化するために、シャトー・○○という自分の所有する建物の名を冠したワインが造られるようになったのです。
ボルドーは、2種以上のブドウによるブレンドで産まれるワインが多いため、畑そのものよりも、「その所有者がどんなワインを造るか」が注目されます(すなわち、シャトー・○○というブランドの誕生)。
そしてそのブランドを高める(守る)ために良い畑を買い足したり、良い醸造家を雇ったりという経済活動に繋がり大規模なマーケティングが必要になり、そのマーケティングを支えるためにも資金=生産量が必要だったのです。
特にボルドー地方の左岸地区(メドックやグラーヴ、ソーテルヌ)には大規模なシャトーがあり、1つのシャトーで数万本単位でワインが造られ、メディアに現れるシャトー・オーナーたちはまるで現代の貴族のようです。
それにしても有名なシャトーにはお洒落な名前が付いたものが多いです。
◆シャトー・モンローズ
なだらかな丘(モン)の上に位置するシャトーで、昔シャトーの周辺はピンク色の花をつける木に覆われ、開花時には一面ピンク色(ローズ)になっていたことに由来します。
◆シャトー・デュクリュ・ボーカイユ
かつての所有者だったデュクリュの名と、畑一面に広がる美しい(ボー)小石(カイユ) に由来しています。
その他の有名なシャトーにも色々由来がありますのでぜひ調べてみて下さい!
◆ドメーヌ
シャトーが建 造物を指すのに対し、ドメーヌは土地を指す言葉です。厳密には区画や領地という言葉になります。会社経営的なワイン造りのボルドーに対し、ブルゴーニュは あくまで農民的なワイン造りを行っており、ボルドーの膨大な生産量に対しても極々少量の生産量です(少ないもので1樽・300本程度というものも!)。
代々続く畑を守るという意味で、土地を表す言葉と自分の名前(または先祖の名前)を付けたのが始まりと言われております。
なので、ブルゴーニュでは世代交代によりドメーヌの名前が変わることもあり、生産者どうしの結婚などで新しいドメーヌが生まれたりします。それが面白くもあり、ややこしくもあるのですが。。。
シャトーとドメーヌに優劣があるわけではなく、方法は違えど「美味しいワインを造る」という思いは同じです。
一部の高級銘柄は手の届かないところに行ってしまった近年の世界的なワインブームですが、たとえお手頃なワインでも、こういった歴史や背景を知りながら飲むとまた一層味わい深いものになるのではないでしょうか?
幟町店 山岡